BtoBデジタルマーケティングの3つの課題「営業連携」「コンテンツ制作」「社内意識」とその解決策

デジタルマーケティングの3つの課題の解決策を探る
Last Updated on 2024年4月24日 by 荻野永策

BtoBマーケティングの施策展開では、BtoBならではの様々な課題が存在する。今回のコラムでは、BtoBのデジタルマーケティングでよくある3つの課題に焦点を当て、その解決策を探ってみよう。

BtoBのデジタルマーケティングとは?

デジタルマーケティングとは、WEBサイト、メール、ソーシャルメディア、動画、スマホ、アプリなど、様々なデジタルコンテンツやデジタルメディアを活用したマーケティング活動のことである。

BtoBにおけるデジタルマーケティングの3つの課題

デジタルマーケティングを運用し効果を高めるには、様々な課題が存在する。そういった課題を全社的に解決しなければ、BtoBのデジタルマーケティングの効果を最大化できない。

では、BtoBのデジタルマーケティングにはどのような課題があるのだろうか?まずは課題の詳細をご紹介しよう。

デジタルマーケティングの課題1「営業部との連携課題」

1つ目の課題は、「営業部門との連携」である。BtoBのデジタルマーケティングでは、WEBやメールなどを活用して新規リード(見込み客)の獲得(リードジェネーション)と育成(リードナーチャリング)を行う。そのため、実際に商品を売るという「クロージング」は営業部門の役目となる。

BtoBの場合、製品・サービスの特性上、大抵はデジタルマーケティングで営業が完結することがない(ECショップのような形態をとることができれば話は別)。このため、営業部門にリード(見込み客)の状況を伝え、営業部門に動いてもらうという「営業部門との連携」が必須となる。

しかしこの営業部門との連携が難しい。その理由は3つある。

営業部との連携が難しい理由1「ライン引き」

1つ目の理由は、「どういった状態のリード(見込み客)をどんなタイミングで営業部門にバトンタッチすればよいかの「ライン引き」が難しい」である。

例えば、WEBサイトから「見積り依頼」がきたので、営業部門にバトンタッチしたとする。しかし、その後、その商談がどうなったのかのフィードバックがなければ、リードナーチャリングをどうすれば良いか判断できない。

さらに、WEBサイトで、「資料請求」がきたので、営業部門にバトンタッチしたとする。しかし、資料請求は、情報収集の段階であることが多く、実際に営業部門が動いたとしても、成約までは程遠い。そうなると、営業効率が下がってしまう。

つまり、営業部門にどういうリードをどんなタイミングで展開すべきかの「ライン引き」が難しいのである。しかもこのライン引きは製品・サービス特性によって異なるため、複数製品ある企業の場合は非常に複雑になる。

加えて、営業部門の営業担当者によっても、考えが異なるケースもある。営業担当Aは、「WEBのリード(見込み客)は一旦全てAPOをとる」と考えているし、営業担当Bは、「ある程度確度の高いリード(見込み客)がほしい」と考えているといったケースだ。こうなると、担当者レベルでもライン引きが異なってくる。

営業部との連携が難しい理由2「リードの状況把握」

2つ目の理由は、リードの状況把握である。営業部門がフォロー営業を行なった結果、受注成功のケース、失注のケース、商談消滅のケースなど、様々な結果に落ち着く。

その状況が時間とともに変化するため、状況把握の共有が非常に難しい。当然、営業部門としても、「人間関係の問題などで状況を聞きにくいリード」がいるため、いつまでたっても、状況がわからないということもあるだろう。

こうなると、状況把握が共有できず、デジタルマーケティングとしてもどう施策を打つべきか、判断ができなくなる。

営業部との連携が難しい理由3「フォロー状況の把握」

3つ目の理由は、フォロー状況の把握である。

例えばセミナーを実施することになり、営業担当者が個別にメールで案内したとする。それを知らずに、デジタルマーケティング担当者が一斉メール配信すると、1つのセミナーに対して、何通も案内が来ることになる。

すでに申し込みしたリードに「ぜひお申し込みを」などのセミナー案内メールが、デジタルマーケティング担当者から配信されるのは、非常にまずい。解約にもつながる可能性もあり、手厚いリードナーチャリングは裏目に出てしまう。

デジタルマーケティングの課題2「部門をまたいだコンテンツ制作の課題」

2つ目の課題は、「部門をまたいだコンテンツ制作」である。デジタルマーケティングではデジタルコンテンツの設計・制作が必須であるが、それらのコンテンツの情報源は他部門となることが多い。たとえば、ITソリューション企業の場合は技術部門(SE)が情報源になる。

こういった他部門とコンテンツの制作で連携する場合に、コンテンツの「質」や「量」で課題が発生することがある。その理由をITソリューション企業(SIerなど)を例にご紹介する。

コンテンツ制作が難しい理由1「コンテンツ目線」

1つ目の理由は、コンテンツ制作の目線である。ITソリューション企業(SIerなど)の場合、SE(技術部門)がコンテンツの情報源となるが、そのコンテンツには、技術用語が多く、コンテンツ化しても集客ができない。集客できても、同業者や技術者ばかりで、実際に狙っているターゲットとは違うといったこともある。

特に業務部門の担当者を集客したいというような場合は、技術用語(IT業界用語)では検索しない(検索できない)ため、集客ができないのである。これではリード(見込み客)獲得も思ったように進まず、「WEBは効果がない」と判断されかねない。

これは、技術部門の作成するコンテンツが、「技術者(SE)目線」で作成されるため、発生してしまう。

コンテンツ制作が難しい理由2「コンテンツ変換」

2つ目の理由は、コンテンツ変換である。理由1でも述べたように、技術部門からのコンテンツは、技術者(SE)目線であることが多い。そのため、コンテンツの修正をする必要があるが、これをデジタルマーケティング部門が実施すると、様々な課題が浮き彫りになる。

たとえば、技術部門から渡された資料(ワードやPDF、パワポなど)をWEBの検索ニーズ(SEOワードなど)にあわせてコンテンツを改善する場合だ。この場合、キーワードを変更しようにも、その技術に対する知識がデジタルマーケティングの担当者にはなく、変換が難しいのである。

さらに、変換するには、時間的リソースも必要になるため、結果、技術部門から渡されたワードやパワーポイント、PDFをそのままWEBページ、メルマガにしているだけになる。

コンテンツ制作が難しい理由3「質の高いコンテンツ設計を行うためのリソース」

3つ目の理由は、質の高いコンテンツ設計を行うためのリソースである。デジタルマーケティング担当者には、技術部門から「これをWEBに掲載してほしい」や、「このセミナーをメルマガでながしたい」など様々な依頼がくる。

その結果、日々の業務に時間が取られ、「WEBを作ること」、「メルマガを流すこと」が目的になってしまい、PDCAを回す時間、質の高いコンテンツを設計する時間をとることができなくなる。

この結果、リード(見込み客)にとって有益なコンテンツの設計ができなくなり、一方的なデジタルコミュニケーションとなってしまう。

デジタルマーケティングの課題3「社内意識の低さ」

最後の課題は、「社内意識の低さ」である。社内(特に経営者や営業部門)のデジタルマーケティングに関する有用性の意識が低く、優先順位を下げられてしまい、何もできないのである。

BtoBの場合は特に強く、展示会や電話営業の方が即効性があり効果もあると考えている企業も多い(実際にそのような製品やサービスもあるため、否定はできないが)。

では、なぜ意識が低いのか、そこには3つの理由がある。

デジタルマーケティングの意識が低い理由1「今までの成果」

1つ目の理由は、今までの成果がないことだ。デジタルマーケティングでは、自社のWEBサイト活用が重要であるが、過去に自社サイト改善で失敗した、成果が出なかったなどいろんな経験がある企業の場合、その経験がアダとなり、デジタルマーケティングに対して成果がないと会社が考えていることが多い。

その結果、デジタルマーケティングを進めたくても、「成果出るの?以前やったけどでなかったよ」と言われて終わってしまう。これでは、今までご紹介した、営業部門との連携やコンテンツ制作の課題を解決することもできなくなる。

デジタルマーケティングの意識が低い理由2「リソース不足」

2つ目の理由は、リソース不足である。会社としてデジタルマーケティングに対して意識が低いため、デジタルマーケティングに対して予算や人を割り当てる意識が低くなる。その結果、担当者のスキル育成不足、時間不足などが発生する。

さらに、デジタルマーケティング担当者は、日々の更新業務だけで時間が取られ、育成や戦略立案、コンテンツ設計、PDCAなどに時間を割くことができないのである。その結果、ますますデジタルマーケティングの効果を実感できなくなり、ますます意識が下がる。こうなると負のスパイラルである。

デジタルマーケティングの意識が低い理由3「保守意識」

3つ目の理由は、保守意識である。会社から見れば、デジタルマーケティングには取り組んでいなくても、展示会や電話営業など、様々な営業活動をしている。当然、売上という成果も出している。そのため、「わざわざやる必要性がない」と判断されてしまうことがある。

また、営業担当者が「自分が担当しているリード(見込み客)は自分でフォローする」という意識を持っており、デジタルマーケティング側で何かされると困るといったケースもあるようだ。

こういった保守意識から、デジタルマーケティングに関する意識が低くなる。

BtoBにおけるデジタルマーケティングの3つの課題を解決する

このような3つの課題がBtoBのデジタルマーケティングには存在する。

課題1「営業部との連携課題」
ライン引き
リードの状況把握
フォロー状況の把握

課題2「部門をまたいだコンテンツ制作の課題」
コンテンツ目線
コンテンツ変換
質の高いコンテンツ設計を行うためのリソース

課題3「社内意識の低さ」
今までの成果
リソース不足
保守意識

では、こういった課題を解決する方法について、考察してみよう。ただ、すべての課題を同時に解決するような方法はないため、できることから1つ1つといった解決になるだろう。

デジタルマーケティングの課題1「営業部との連携課題」の解決

この課題を解決するには、リードナーチャリングシナリオ(獲得したリードを案件化し受注へと導くためのシナリオ)を営業部門と共有し、そのうえで、デジタルマーケティングでできる部分と人(営業部門)が動かなければできない部分を明確に分けることが重要だ。

リードナーチャリングシナリオは「イメージ」で共有するのではなく、可視化・具体化して共有しなければならない。そうすれば、「獲得したリード(見込み客)をこういう手順でこういう風にデジタルマーケティングで育成するので、この段階で営業部門にバトンタッチする」というような議論が行いやすくなる。

さらに、バトンタッチの段階では、クロージングに必要なリードの情報を営業に渡す必要がある。「クロージングに必要なリードの情報」は、リードナーチャリングシナリオのどの段階で、どうやって、どこまでの情報を収集するか?の設計が必須だ。なぜなら、「クロージングに必要なリードの情報」をどこまで入手すれば、営業部門は動きやすいのか?が明確になるからだ。この辺りの設計が、デジタルマーケティング担当者の腕の見せ所となるだろう。

そのため、「営業部との連携課題」を解決するには、下記の3つを意識しなければならない。

・最適なリードナーチャリングシナリオの可視化と具体化
・そのシナリオのKGI・KPIの具体化とシナリオ自体のPDCA
・どの段階でどういう情報を取るべきか?の情報収集の設計

そして、この3つを俯瞰する「リードナーチャリングシナリオ設計書」をつくり、営業と共有しながら連携方法を具体化していくと課題を解決できるヒントが見つかるだろう。

この3つを俯瞰するリードナーチャリングシナリオの設計書については、弊社に設計書のサンプル(下図)がある。

リードナーチャリングシナリオの設計書サンプル

このサンプルは下記のセミナーで開示しているので、ご興味あればぜひ下記セミナーにお問い合わせいただければと思う(ただし、弊社と競合・近似する事業を行なっている会社からのお申し込みはお受けできない)

リードナーチャリングの勘所がつかめるセミナー

デジタルマーケティングの課題2「部門をまたいだコンテンツ制作の課題」の解決

この課題を解決するには、「様々な目線を持つデジタルマーケッターの育成」がポイントとなる。例えば、IT系企業であれば、SE出身のデジタルマーケターなどである。

このようなデジタルマーケターを育成することで、様々な目線のコンテンツ設計と制作が最小工数で実現できるため、非常に効率の良いコンテンツ制作が可能となる。

逆に技術部門に対して、デジタルマーケティングの重要性を広げていくという方法もある。これができれば、技術部門でSE目線ではないコンテンツ作りが徐々に可能になるだろう。詳細については、下記の社内意識の低さでご紹介する。

デジタルマーケティングの課題3「社内意識の低さ」の解決

この課題を解決するには、成果を出しながら社内意識を高めていくという方法がある。その方法のヒント・成功事例として、ITソリューションを販売するA社の事例を紹介している下記のコラムをご覧いただければと思う。

●ITソリューション企業A社の事例
デジタルマーケティングの社内啓蒙の進め方「7つの手順」!KPIを設定し経営層にその重要性を伝える方法

デジタルマーケティングの小さな成功を積み重ね、それをトリガーにして、部門連携の強化、社内意識の改善を行なっていく手順である。当然、技術部門にもその重要性が広まっていくため、コンテンツ作りの改善にもつながっていくだろう。

このように、デジタルマーケティングの3つの課題は、デジタルマーケティングを運用し、効果を高めていく上で、常につきまとう課題である。しかし、こういう課題があると認識した上で、デジタルマーケティングを運用することができれば、効率よく効果を高めていくことも可能であるため、ぜひ今後もこの3つの課題を意識して、デジタルマーケティングを進めていただければと思う。

(平成30年1月27日 デジタルマーケティング「THREE-VIEW」


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