リードナーチャリングが失敗する4つの理由とその対処法「なぜ見込み客は振り向いてくれないのか?」

見込み客に振り向いてもらう「売るパターンと商品連鎖」
Last Updated on 2023年2月18日 by 荻野永策

BtoBの営業戦略では、「新規の見込み開拓」と並んで大きな営業課題となるのが、「リードナーチャリング」である。

リードナーチャリングの概要や課題、そのやり方については、「コンテンツを活用したリードナーチャリングとは?その6つの手順とPDCAの回し方」に詳細を説明しているので、是非ご覧いただければ幸いだ。今回は、このリードナーチャリングが失敗する4つの理由とその対処法のポイントをご紹介する。

リードナーチャリングの目的は、当然見込み客を育成し、ホットリードに育てていくことであるが、これがうまくできない方は、ぜひこのコラムを最後までご覧いただきたい。解決のヒントとなる「売るパターンと商品連鎖」という良いヒントが得られるだろう。

見込み客の絶対的な2つの権利

リードナーチャリングが失敗する理由には、「見込み客が持つ絶対的な2つの権利」が大きく起因する。その2つの権利こそが、いつ買うか?の「決定権」どこから買うか?の「選択権」である。

見込み客がもつ権利「いつ買うか?の決定権」

「いつ買うか?の決定権」とは、あなたの商品・サービスを購入するタイミングをいつにするか?を決めることができる決定権のことである。1月に買うのか、12月に買うのか、来年買うのか、来月買うのか、そもそも買わないのか、その決定権は見込み客にある。これがリードナーチャリングが失敗する理由を生み出す要因となる。

見込み客がもつ権利「どこから買うか?の選択権」

「どこから買うか?の選択権」とは、見込み客が商品・サービスを購入する際に、どこから(もしくは誰から)買うか?を選べる権利のことである。あなたから買う以外にも、当然選択肢があり、その選択肢の中から購入先を決める。これがリードナーチャリングが失敗する理由を生み出す要因となる。

この2つの権利があるからこそ、リードナーチャリングがうまくいかないのである。

見込み客の2つの権利を軸にした「見込み客9の分類」

では、この2つの権利によって、どのような失敗理由が生まれるのだろうか?

その失敗理由を明確にするには、2つの権利を軸にして、見込み客を下記のように9つのグループに分類するとわかりやすい。

リードナーチャリングを実現するための見込み客の9の分類

上記の9つの分類では、わかりやすくするために「車の購入」を例に分類しているが、あなたの商品・サービスでも同様の分類ができるだろう。なお、各見込み客のネーミングについては、私のセンスがないので、あんまり気にしないでいただきたいが、イメージは伝わると思う。下記にその詳細を簡単にご紹介しよう。

見込み客の9分類「まだまだ顧客」

いつか商品・サービスが欲しいと思っているだけ。興味がある程度。

見込み客の9分類「ほしいな顧客」

商品・サービスをぼちぼち買うと決めている。情報収集もそこそこやり始めている。

見込み客の9分類「じらし顧客」

商品・サービスを買うことは決まっている。予算も決まってきている。あとはどこから買うかを決めるだけ。

見込み客の9分類「ウキウキ顧客」

いつか商品・サービスが欲しいと思っている。購入先の選択肢は頭にある状況。

見込み客の9分類「もうすぐ顧客」

購入先の選択肢があり、その中からぼちぼち買うことが決まっている。

見込み客の9分類「お悩み見込み顧客」

購入先の選択肢から買うことが決まっている。あとは選ぶだけ。

見込み客の9分類「将来見込み顧客」

あなたの商品・サービスが良いと思っていて、いつ買うかを決めかねている。もしくは何かの事情で今は買えない状況。

見込み客の9分類「見込み顧客」

あなたの商品・サービスが良いと思っていて、もう買うと決めている。

見込み客の9分類「優良見込み顧客」

あなたの商品・サービスを買うと決めた状況。ホットリードと言える状態。

どこかにハマる!「見込み客9の分類」

このように9つに分類すると、あなたの見込み客も必ずこの9つのどこかに分類されるはずだ。そして往々にして、見込み客の数は、右上に行けばいくほど少なくなり、左下に行けばいくほど多くなる。例えば展示会で名刺交換した見込み客のほとんどは「まだまだ顧客」である可能性が高く、当然その数も多い。

リードナーチャリングがうまくいかない4つの理由

では、この9の分類をベースにして、リードナーチャリングがうまくいかない4つの理由をご紹介しよう。その理由が下記の4つである。

(1)見込み客の状態に関係なく売り込むから
(2)上・右に持っていく仕掛けがないから
(3)顧客が進もうとしている道を見抜けていないから
(4)自分・自社が得意とする「売るパターン」がないから

(1)見込み客の状態に関係なく売り込むから

リードナーチャリングが失敗する理由1つ目は、「見込み客の状態に関係なく売り込むから」である。

9の分類を見てわかるように、たとえば「まだまだ顧客」に関しては、「どこから買うか?」も「いつ買うか?」もまだ決まっていない。そのため、このような顧客にいくら提案や売り込みをしても、反応は鈍い。これは「ほしいな顧客」も同様である。

このような状況の顧客には売り込みよりも、売り込まずに信頼関係を作っていく方が効果的だ。しかし、営業担当者は「売ること」が仕事なので売り込もうとする。その結果、「なんかあったら連絡するから今はいいよ」と言われてしまい、フォローができなくなるし、しにくくなる。

結果、リードナーチャリングが失敗する。

(2)上・右に持っていく仕掛けがないから

リードナーチャリングが失敗する理由2つ目は、「上・右に持っていく仕掛けがないから」である。

9の分類を見てわかるように、顧客の状態がどこから始まるにせよ、上・右に状態を遷移させていくことがリードナーチャリングでは重要だ。なぜなら、上・右に進めば進むほど、売れる可能性が高くなるからだ。

そのためには、上・右に持っていくための仕掛けや、今顧客がどこの状況にいるのか?を把握する仕掛けが必要になる。当然、顧客が、「私は今、じらし顧客です」とか「ウキウキ顧客です」のように状況を言ってくれるわけではないため、リードナーチャリングしながらどの状態なのかを把握できる判断材料を集めておく必要がある。

このような仕掛けをリードナーチャリングを実行する作戦の中で用意しておく必要があるのだ。これがないと、うまく進められない。

(3)顧客が進もうとしている道を見抜けていないから

リードナーチャリングが失敗する理由3つ目は、「顧客が進もうとしている道を見抜けていないから」である。これは商材や業界特性があるかもしれないが、顧客によっては「買うパターン」が決まっている顧客がいる。例えば、住宅で考えてみよう。

結婚し、子供が生まれ、家族が増えることで、住宅の購入を考え始める。その後、展示会場などをめぐり、どこのメーカーにするかを決め、最終的に1社に決める。だいたいこのような流れになるだろう。

この場合、「まだまだ顧客」→「ほしいな顧客」→「じらし顧客」→「お悩み見込み客」→「優良見込み客」という具合に進む。これが顧客の「買うパターン」である。

このように商材や業界によっては「このように進むという傾向」が存在するケースがある。これが「顧客が進もうとしている道」、つまり、買うパターンである。これはBtoBでも同様である。顧客はどのように買うか?をあらかじめ決めており、その手順に従って購入プロセスを進める。

しかしこのプロセスは顧客によって微妙に異なることがある。正確には、顧客の担当者によって異なるといえばよいかもしれない。仕入れ担当者が決める場合と、経営者(社長)が決める場合とでは、買うパターンが違う可能性がある。

そのため、顧客の購入プロセスを予測し、そのプロセスに合わせて営業活動を展開しなければ歯車が合わない。歯車が合わないと「買ってくれない」のである。

(4)自分・自社が得意とする「売るパターン」がないから

リードナーチャリングが失敗する理由4つ目は、「自分・自社が得意とする「売るパターン」がないから」である。顧客に「買うパターン」があるように、あなたにも、「売るパターン」があるはずだ。この売るパターンは、自分・自社の得意な「リードナーチャリングの進行のパターン」である。

「優良見込み客」に持っていくための、あなたが得意とするパターンを作っておくことで、そこにハマれば売れるというシナリオが描ける。このシナリオがあると、リードナーチャリング力は非常に強くなる。逆にこれがないと、理由3で説明したように、顧客の買うパターンに合わせて動かねばならず、振り回されることも多くなるだろう。

買うパターンを見抜きながら売るパターンにはめていく、それがリードナーチャリングでは重要なのである。

以上がリードナーチャリングが失敗する4つの理由である。再度わかりやすくまとめると下記のようになる。

失敗理由1:見込み客の状態に関係なく売り込むから
失敗理由2:上・右に持っていく仕掛けがないから
失敗理由3:顧客の買うパターンを見抜けないから
失敗理由4:自分の得意な売るパターンがないから

リードナーチャリングを成功させるポイント「売るパターンと商品連鎖」

ではこれらの失敗理由を回避するために、どうすべきかを考えてみよう。様々なリードナーチャリングの作戦が考えられるが、具体的な例を交えながら1つの具体策をご紹介する。それが、「売るパターンと連動した商品連鎖」である。

「売るパターンと商品連鎖」をITソリューションのリードナーチャリングから学ぼう

それでは、リードナーチャリングを成功させるポイント「売るパターンと商品連鎖」についてご紹介しよう。わかりやすく説明するために、例を用いながらご紹介する。

例として取り上げるのは、IT関連企業(SIerなど)が販売しているセキュリティー関連のITソリューション製品を例にご紹介しよう。理由は私の主観でしかないが、セキュリティー関連のITソリューション製品はたいていの場合、どのような企業でも導入しているため、イメージしやすいのでは?と考えたからだ。全社員が使うウイルス関連のソフトや、暗号化関連のソフト、データの持ち出し禁止関連のソフトなど、おそらくあなたも何かしら普段活用しているだろう。

このようなITソリューション製品のリードナーチャリングを考えてみよう。

まず、商品連鎖から考えてみよう。商品連鎖とは、売りたい商品を売るための商品シナリオのようなものである。例えば、スーパーで言えば、ウインナーの試食をしてもらい、その後ウインナーを売るというイメージだ。この場合、商品連載は「試食→売りたい商品」という2段階の連鎖になる。

これをセキュリティー関連のITソリューションに置き換えると、下記のような商品連鎖が考えられる(よくあるケースとして)。

(1)製品カタログや導入事例などの資料プレゼント
(2)セキュリティーセミナーの開催
(3)個別導入相談
(4)数ヶ月の無料トライアル
(5)導入提案・見積もり
(6)契約

実に6段階もあって大変であることがよくわかるが、この商品連鎖を9つの分類に当てはめると、下記のような売るパターンが具体的なルートとして考えられる。

ITソリューション営業の売るパターンと商品連鎖

まだまだ顧客に対して、展示会やWEBで資料をプレゼントし、その後セキュリティーセミナーを実施、そして個別相談をしながら、無料トライアルを提案して、最後に売るという流れだ。

当然、この売るパターンは別ルートでもよい。自分が得意とするルートに商品連鎖を当てはめていけば良いのである。

ただし、注意点がある。

たとえば、上図のように「まだまだ顧客」「ウキウキ顧客」「将来見込み客」という具合に、「いつ買うかの権利」よりも、「どこから買うかの権利」を優先して進める場合は、「セキュリティーならおたくしかないねー」と信頼関係を作っていくための訴求を優先しなければならない。なぜなら、縦軸(上に進む)を進行ルートとして選んでいるからだ。

逆に、「まだまだ顧客」「ほしいな顧客」「じらし顧客」という具合に、「いつ買うかの権利」を優先して進める場合は、「セキュリティー製品を導入しないとやばい」という訴求を優先しなければならない。なぜなら、ヨコ軸(右に進む)を進行ルートとして選んでいるからだ。

このように、自分はどのルートでリードナーチャリングするとやりやすいか?を決めておき、その上で、優先すべき訴求(相手に伝えること)を決め、営業ツール化したり、セミナーのテーマにしたりするのである。

例えば、セキュリティーセミナーで考えてみよう。

ウキウキ顧客を将来見込み客にするためのセミナーとはなにか?を考えてみよう。「事例などを中心に紹介するセミナー」が1つの具体策になるだろう。なぜなら、事例を通して「いかに高度なセキュリティーを実現し様々なお客様の課題を解決してきたのか」を見込み客に理解してもらうことができるからだ。

逆に「ほしいな顧客」を「じらし顧客」にするためのセミナーとはなにか?を考えてみよう。上記とは違い、まず必要性を訴求しなければならないので、セミナーはセミナーでも、テーマが異なるだろう。例えば「知らないと危険!うっかりミスから始まる個人情報漏洩セミナー」のようなイメージだろう。とにかく、セキュリティー関連のITソリューションの導入を決めてもらうということに力を注ぐのである。

同じセキュリティーセミナーでも売るパターンの進行方向が違えば、訴求する内容やコンテンツもことなるというわけだ。だからこそ、自分が得意な売るパターンの進行方向を決めた上で、商品連鎖を考えていかねばならない。

このように、商品連鎖と売るパターンをうまくはめていくことで、どういうリードナーチャリングにしていくべきか?が具体的に決まってくる。どういうルートで進行し、どういう訴求を、どういう商品連鎖で実現していくのか?を事前に考え、計画的にリードナーチャリングを実行しよう。

そうすれば下記の4つの失敗を防げる可能性が高くなるだろう。

失敗理由1「見込み客の状態に関係なく売り込むから」が防げるワケ
→商品連鎖の各段階で顧客の状態に合わせた訴求ができるようになる

失敗理由2「上・右に持っていく仕掛けがないから」が防げるワケ
→商品連鎖の各段階で上・右のどちらに進めるのか?と進めるために何をすべきかを明確化できるようになる

失敗理由3「顧客が進もうとしている道を見抜けていないから」が防げるワケ
→自分の得意な売るパターンを意識して営業できる

失敗理由4「自分・自社が得意とする「売るパターン」がないから」が防げるワケ
→自分の得意な売るパターンと商品連鎖が連動する

あなたの会社に「商品連鎖」はあるだろうか?その商品連鎖は売るパターンにはまっているだろうか?それをまずは考え、リードナーチャリングに生かしてみよう。

(平成28年12月8日 BtoB特化のインバウンドマーケティング「THREE-VIEW」


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