御用聞き営業・商品提案・ソリューション提案営業とは?その違いは何か

サブちゃんがソリューション提案したらどうなるか?
Last Updated on 2023年2月18日 by 荻野永策

今回の記事は、「御用聞き営業」「商品提案営業」「ソリューション提案営業」の3つの営業方法の違いについて、国民的アニメ「サザエさん」で登場する三河屋のサブちゃん(以下、サブちゃん)を例にご紹介する。御用聞き営業が得意なサブちゃんが「ソリューション提案したらどうなるのか?」など、サブちゃんからその違いを学び、あなたの営業がどうあるべきかを検討してほしい。

御用聞き営業とは何か?

御用聞き営業とは、「お客様の御用をお聞きして指定された商品を指定された納期までに納品する営業方法」のことだ。地域密着型のビジネスに多く、(1)営業担当者が定期的に訪問して御用をお聞きし、注文を受け納品するパターン、(2)お客様から呼び出されて御用をお聞きし、注文を受け納品するパターンの2つのパターンがある。

サブちゃんは御用聞き営業のプロで、(1)のパターンである(公式な設定とは違うかもしれないが)。「チワー、三河屋でーす」っと裏口から入り、御用をお聞きするシーンは有名である。

どちらのパターンにしても、「御用を聞く」「注文をうける」「配達して納品する」といった点は変わりはない。御用聞き営業の最大の武器は「利便性」であり、お客様からみれば、「言えば持ってきてくれる」というありがたい存在となる。

御用聞き営業のメリット・デメリット

この御用聞き営業のメリットは、「安定感」であろう。この安定感は、人間心理における「現状維持バイアス」が大きく関連している。

<現状維持バイアス>

大きな状況変化ではない限り、現状維持を望むバイアス。未知なもの、未体験のものを受け入れず、現状は現状のままでいたいとする心理作用のこと。
参考サイト:はてなキーワード

つまり、サブちゃんで言えば、「いつもサブちゃんに頼んでいるし、今回もそうしよう」となるため、毎回注文が入るというわけだ。極端な言い方になるが、ある意味「ほおっておいても注文がくる」という状況でもある。この結果、売上に安定感をもたらすことになる。

しかし、デメリットもある。御用聞き営業は、「価格競争・納期競争」に陥ることがある。例えば、BtoBであれば、「全社的に経費削減をすることになった」というような状況変化が発生した場合、仕入れ価格の見直しといったことが起きる。こういったケースでは現状維持バイアスは効果を発揮せず、結果的に価格競争となる。さらに、競合が飛込営業をして、「今より値段を安くする」というような営業を展開した場合も同様である。

つまり、安定感があるように見えるが、ちょっとしたことで安定感が崩れてしまうという脆さをもつのが御用聞き営業である。

商品提案営業とは何か?

商品提案営業とは、「お客様に対して商品の紹介・案内を積極的に行う営業方法」のことで、御用聞きが「御用を聞く」のに対し、商品提案営業は「商品を提案して御用を作る」という違いがある。

サブちゃんが、もし「商品提案営業」をしたとしたら、「チワー、三河屋でーす。今日は石川県産のタケノコをお持ちしました」と言われてもないのに目玉商品を持ってきてその場で商品説明をし売り出すというイメージだ。

当然、売り込むのは、目玉商品だけでなく、新商品、キャンペーン商品などだ。そのため、季節的に需要が発生するような商品(例えば、クリスマス、バレンタイン等)を提案するというような、ある種の営業の嗅覚のようなものは必要になる。

商品提案営業のメリット・デメリット

商品提案営業のメリットは、「攻めの営業による機会損失の削減」である。御用聞きはあくまで待ちの営業であるため、御用がない限り営業のチャンスは生まれない。しかし、商品提案営業は「売り込み」ができるので、事前に攻めることが可能となる。その結果、競合にお客様を奪われないというメリットが生まれる。

わかりやすく言えば、サブちゃんが「サザエさん、バレンタインのチョコでおいしいチョコがありますよ」と事前に提案するため、サザエさんが他店で買ってくるというようなことがなくなる。その結果、他店にサザエさんのチョコ購入という機会を奪われなくて済むのである。

逆にデメリットもある。それは、しつこい押し売りと思われることや、必要もない商品提案ばかりだと営業効率が悪化することだ。お客様にとって、提案する商品が「タイミングが良くて興味深いものばかり」であればよいが、そうでないこともある。そうなると、売れることはなく、結果的にしつこい押し売り、効率の悪化というような事態を招く。

上述のサブちゃんの例で言えば、石川産のタケノコを仕入れたものの、提案しても誰も買ってくれないというようなパターンである。訪問する先々で、「タケノコねぇ、今はいいわ」といわれ、全く売れない。そうなると、不良在庫になるだけでなく、サブちゃんの営業経費(人件費)も無駄になる。

さらにそれだけでなく、三河屋そのものに対する評価も下がる可能性がある。それがハロー効果である。

ハロー効果(ハローこうか、英:halo effect)は心理学者エドワード・ソーンダイクによって名づけられた造語で、心理的効果の一つ。ある対象を評価をする時に顕著な特徴に引きずられて他の特徴についての評価が歪められる現象のこと。認知バイアスの一種である。
参考サイト:wikipedia

要するに、サブちゃんの売込みが激しいと、「三河屋さんって最近売込み激しいわね」のような悪い噂がたってしまい、企業のイメージを悪化させてしまうということだ。このようなケースになると、地域密着で商売をしている三河屋にとっては大ダメージである。

特にBtoB営業では、商品提案営業がしつこいと、担当者も「忙しい」といって会ってくれなくなるなど、駆け引きが難しい局面が出てくると考えられる。

ソリューション提案営業とは何か?

ソリューション提案営業とは、「お客様の課題を聞き出し、その課題の解決策を提案することで自社製品の販売につなげる営業方法」のことである。「商品提案営業」が「商品の提案」であるのに対して、ソリューション提案営業は、「お客様の課題の解決方法の提案」となる。したがって、自社商品は、お客様の課題を解決する「手段」にしかならない。

もし、サブちゃんがソリューション提案をしたとしたら、こんな営業になるだろう(タラちゃんが嫌いな野菜があるという前提での話)。

サブちゃんがサザエさんに野菜を売りたい場合
  1. タラちゃんの嫌いな野菜を本人やサザエさんに聞く
  2. タラちゃんの嫌いな野菜をどうすればタラちゃんが食べられるようになるか解決策を考える(この場合はレシピ)
  3. サザエさんにタラちゃんの野菜嫌いを治す方法として考案した解決策(レシピ)を提案する、教える
  4. サザエさんが「今晩やってみようかしら?」というと、ではレシピで使う野菜、お持ちしますね?といって営業に入る

ソリューション提案営業のメリット・デメリット

ソリューション提案営業のメリットは、「解決方法の提案」を行えば、商品の購入を検討していなくても、「検討を始める」というような購入の動機づけが実現できることだ。上記の例の場合、野菜を買うつもりのないサザエさんに「タラちゃんの野菜嫌いを治す方法」を提案することで、野菜購入の動機づけを実現している。まさに、野菜を売らずに「野菜を売る」というような営業方法であろう。

しかし、デメリットもある。それは、課題を発見することが難しいことだ。サブちゃんのように、サザエさん一家と親密な関係があれば、悩み・課題を聞き出すことはまだやりやすいが、BtoBの見込み客から課題を聞き出すことは至難の技である。しかも、課題がわかるまで提案もできないため、課題調査能力がものを言うことになる。これができなければ、とんちんかんな提案をすることになり、いつまでたっても商品は売れない。

「御用聞き営業」「商品提案営業」「ソリューション提案営業」の違いまとめ

今までのご説明で、御用聞き営業、商品提案営業、ソリューション提案営業の違いはお分りいただけたかと思うが、再度まとめよう。

御用聞き営業

サブちゃんが行っている営業方法。「御用を聞く」「注文をうける」「配達して納品する」の3つが基本。メリットは現状維持バイアスによる安定感、デメリットは「価格競争に陥る可能性」である。

商品提案営業

もし、サブちゃんが商品提案するなら、「石川県さんの美味しいタケノコありますけどどうです?」と売り込むこと。メリットは「機会損失の削減」、デメリットは「営業効率悪化、不良在庫増加、企業イメージ悪化」である。

ソリューション提案営業

もし、サブちゃんがソリューション提案営業するなら、「タラちゃんの野菜嫌いを治すレシピを提案」し野菜を売る。メリットは「購入の動機づけができること」、デメリットは「リサーチが大変なこと、間違えると無駄ばかり」である。

あなたの今の営業方法はどれが近いだろうか?そして今後、どのような営業方法を実現すべきだろうか?現状維持バイアスにはまらず、そこから打破する気持ちで、一度営業方法について検討してみてはいかがだろうか?

デジタルマーケティングが「御用聞き営業」「商品提案営業」「ソリューション提案営業」に与える影響

最後に、デジタルマーケティングが「御用聞き営業」「商品提案営業」「ソリューション提案営業」に与える影響についてもご紹介しておく。特に、「商品提案営業」と「ソリューション提案営業」に大きな影響があるのでご紹介しよう。

デジタルマーケティングが「商品提案営業」に与える影響

デジタルマーケティングでは、マーケティングオートメーションを活用したリードナーチャリング(見込み客の育成)が盛んに行われている。マーケティングオートメーションでは、各見込み客個人が、自社のWebサイトのどのページを閲覧したのか?を分析することが可能であるため、商品提案営業に大きな影響を与える。

今までの商品提案営業は、「新製品の提案」が一般的であるが、マーケティングオートメーションを活用すれば、見込み客が興味のある商品の提案が可能となる。具体的には、マーケティングオートメーションで過去数ヶ月以内に商品AのWebページを見た見込み客リストを作成し、そのリストに対しては、商品Aを提案するのである。こういった過去の見込み客の行動をベースに商品提案営業ができるようになるだろう。

デジタルマーケティングが「ソリューション提案営業」に与える影響

デジタルマーケティングは「ソリューション提案営業」にも影響を与える。ソリューション提案営業は見込み客の課題を知ることが重要であるが、その課題調査をデジタルマーケティングを活用すれば可能だ。例えば、見込み客全員に対して、課題調査アンケートのメールを配信すればよいのである。こうすれば、効率よく見込み客の課題調査が実施でき、ソリューション提案営業の効率も高まるだろう。

このように、従来の「商品提案営業」「ソリューション提案営業」だけでなく、デジタルマーケティングといった新しい仕組みを取り入れることで、御社の営業戦略も大ききく変わる可能性がある。

(注意)本コラムとサザエさんとは一切関連性はございません。本コラム内で紹介している内容はサザエさんの公式キャラクター設定やサザエさんのストーリー・世界観とは関連性がございません。あくまで営業方法の違いをわかりやすく説明するためのものです。

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